「うちのボールパイソン、最近ずっと上を向いているけど大丈夫?」
そんな不安を抱える飼育者さんもいるかもしれません。
ボールパイソンが上を向くという行動は、一見かわいらしくも見えますが、場合によっては注意が必要なサインでもあります。
とくに首を反らせるようにして長時間上を向いている場合、「スターゲイジング」と呼ばれる神経症状の可能性もあるため、早めに異変に気づくことが大切です。
この記事では、ボールパイソンが上を向くときに考えられる原因と、注意すべき行動、そして飼育者ができる対処法について詳しく解説します。
ボールパイソンが上を向くのは普通の行動?

ボールパイソンが上を向く姿を見かけたとき、「何か異常があるのでは?」と心配になる方も多いかもしれません。
しかし、必ずしもすべての「上を向く行動」が異常というわけではありません。
たとえば、飼育ケージの天井にあるライトやケージのフタ、上にいる飼育者の動きなどに反応して顔を向けているだけのこともあります。
また、匂いを嗅いでいる、レイアウトの変化を確認している、といった「探査行動」の一環として上を向くこともあります。
このような場合は、しばらくすれば自然に頭を下げて他の行動に移るため、特に心配はいりません。
しかし、同じ姿勢で長時間動かない、頻繁に繰り返すといった場合は注意が必要です。
ボールパイソンの「スターゲイジング症候群」とは?

ボールパイソンが頻繁に上を向いたまま動かない、または背中を反らせるようにして仰け反る――そんな行動が見られる場合、「スターゲイジング症候群(Stargazing)」と呼ばれる神経系の異常を疑う必要があります。
スターゲイジングとは、直訳すると「星を見つめる」という意味で、首を真上に反らせたまま戻せなくなる、まるで空を見上げているような姿勢を指します。
この状態が長時間続いたり、何度も繰り返されたりする場合は、正常な反応とは異なります。
さらに症状が進むと、バランス感覚が失われ、身体がひっくり返ったまま起き上がれない、真っすぐに進めない、などの異常行動が現れることもあります。
また、食欲の低下や、ケージ内での極端な無反応などもあわせて見られる場合があります。
このような場合は自然に治ることはほとんどなく、何らかの疾患が背景にある可能性が高いため、速やかな対応が求められます。
ボールパイソンが上を向く原因として考えられる主なもの

温度や湿度のストレス
飼育環境が適切でないと、ボールパイソンはストレスを感じやすくなります。
特に温度や湿度の乱れは体調に大きな影響を与える要因です。
例えば、寒すぎると代謝が低下して動きが鈍くなり、逆に暑すぎると異常行動として落ち着きがなくなることがあります。
湿度が極端に低いと、脱皮不全や皮膚の異常も引き起こしやすくなります。
こうした環境ストレスの延長として、神経系に負荷がかかり、スターゲイジングのような症状が表れるケースもあります。
ウイルスや感染症などの病気
こちらはかなりレアなケースではありますが、神経症状が出る原因の一つとして、ウイルス感染が疑われることもあります。
それらげは神経にダメージを与えることで知られており、重度の症状を引き起こすこともあります。
このような病気は進行性であることが多く、放置すれば回復が難しくなるため、早期発見と専門的な診断が重要です。
頭部の外傷や遺伝的要因
頭部を強くぶつけた、落下したといった外傷がきっかけで、神経に異常が出ることもあります。
とくに活発に動く個体では、ケージ内の装飾やガラス面などに頭を打ちつけてしまう事故がないとも限りません。
また、一部のモルフ(品種)では、近親交配などにより神経系のトラブルを抱えやすい遺伝的素因があるといわれています。
とくに「スーパースパイダー」など一部のモルフでは、スターゲイジング傾向が出やすいという報告もあります。
飼育者がチェックすべきポイント

ボールパイソンが上を向く様子に異変を感じたとき、まずは飼育環境や個体の状態を丁寧に観察してみましょう。
以下のような点をチェックすることで、原因の手がかりが得られる場合があります。
まずは温度と湿度の確認です。
パネルヒーターや保温球の位置がズレていたり、季節の変化でケージ内の温度が変化していたりすることがあります。
温湿度計で現在の状況をチェックし、理想的な環境(温度:25〜30℃前後、湿度:50〜70%)が保たれているか確認しましょう。
ボールパイソンの温度と湿度の管理については以下の記事で詳しく解説していますので是非参考にしてください。

次に、最近の行動や体調の変化にも注目してください。たとえば、
- 食欲が落ちていないか
- 排泄が正常か
- 脱皮がスムーズに行われているか
- 動きにふらつきや不自然さはないか
といった点を日々の観察記録と照らし合わせると、異常の有無がわかりやすくなります。
また、環境の変化にも注意です。
掃除の際にケージ内のレイアウトを大きく変えた、新しいシェルターや流木を入れた、部屋の場所を移動させた――といったことがストレスの原因になっていることもあります。
こうしたチェックを行いながら、様子見で良いのか、専門家の診察が必要なのかを判断していきましょう。
動物病院に行くべきタイミングは?

ボールパイソンが上を向いているだけで、すぐに動物病院に行く必要があるとは限りません。
とはいえ、以下のような兆候が見られる場合は、迷わず専門医に相談すべきです。
まず注意すべきなのは、「上を向いたまま戻らない」「何度も同じ姿勢を繰り返す」「ひっくり返ったまま起き上がれない」といった持続的な異常行動です。
これらはスターゲイジング症候群の典型的なサインであり、進行性の神経疾患が疑われます。
また、食欲不振・排泄異常・極端な無反応など、全身状態に関わる異常が複数見られる場合も要注意。
素人判断での放置はリスクが高く、悪化すると命に関わるケースもあります。
受診する際は、エキゾチックアニマルに対応している動物病院を選びましょう。
爬虫類の診療経験が豊富な獣医師であれば、症状や飼育環境からより的確な診断が期待できます。
診察時には、
- 行動の異常が始まった時期と経過
- 飼育環境(温度・湿度・設備)
- 最近の餌の状況や脱皮の様子
などをメモして持参すると、診断の助けになります。
まとめ
ボールパイソンが上を向く行動は、必ずしも異常とは限りません。
匂いを嗅いでいる、飼育環境を確認しているといった日常のしぐさであることも多く、短時間であれば心配は不要です。
しかし、首を反らせたまま動かない、ひっくり返る、食欲がないといった症状を伴う場合は、「スターゲイジング症候群」などの神経疾患を疑う必要があります。
こうした場合は早めに温湿度や体調のチェックを行い、必要に応じて爬虫類を診られる動物病院を受診しましょう。
異変に気づいたときにすばやく行動できるかどうかが、ボールパイソンの健康を守る大切なポイントです。
日頃からの観察と環境管理を怠らず、安心して過ごせる飼育環境を整えてあげましょう。