クレステッドゲッコーは、豊富な模様や色のバリエーション=「モルフ」が魅力のひとつ。
ペットとして迎える場合はもちろん、繁殖を考える方にとっても、モルフの知識は欠かせません。
この記事では、クレステッドゲッコーに見られる代表的なモルフの種類やカラーの違い、遺伝の基本、さらには近年注目されている最新モルフのトレンドまで幅広く解説します。
モルフの選び方や、モルフを意識したブリーディングの基礎を知りたい方も、ぜひ参考にしてください。
クレステッドゲッコーの「モルフ」とは、個体ごとに異なる体の模様や色の違いを指す言葉です。モルフは主に遺伝的な要素によって決まり、特定の模様や色のパターンが親から子へと受け継がれていきます。
ショップや飼育者の間では、「モルフ=品種」として扱われることもありますが、実際には確立された遺伝形質(=遺伝子で再現可能な特徴)と、単なる見た目の違い(=表現型)を明確に区別する必要があります。
クレステッドゲッコーの飼育方法総合まとめについてはこちらを参照してください。
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クレステッドゲッコーの関連記事一覧
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【飼育】
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【繁殖・モルフ】
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・クレステッドゲッコーのホワイトナイト
・クレステッドゲッコーのカプチーノ
・クレステッドゲッコーのアザンティック
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・クレステッドゲッコーのダルメシアン
・クレステッドゲッコーのハーレクイン
【トラブル】
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クレステッドゲッコーのモルフとは?
モルフの呼び方の基本構造
クレステッドゲッコーのモルフは、次のような要素で表現されることが多いです。
ベースカラー × 模様の種類 × 特徴的な性質
たとえば、「レッドベース × ストライプ模様 × ハーレクインタイプ」のように、複数の特徴が組み合わさることで名前がつけられます。
日本では「赤系ハーレクインピンストライプ」などと呼ばれることもありますが、統一されたルールがあるわけではなく、ショップや個人によって表現が異なるのが実情です。
モルフと表現型の違い
すべての特徴が明確に遺伝で再現されるとは限りません。
たとえば「ダルメシアン」や「ドリッピー」は遺伝的要素も関わると考えられますが、完全な再現性があるわけではなく、表現型(Phenotype:見た目に表れる性質)として扱われることも多いです。
一方で「リリーホワイト」や「アザンティック」などは、遺伝子で再現できる確立モルフ(Genotype)とされ、ブリーディングで再現性が高く、明確に分類されています。
複合モルフと名称の曖昧さ
複数の特徴をもつ個体は「複合モルフ」と呼ばれることがあり、「ピンストライプ×ダルメシアン×レッドベース」などがそれに当たります。
ただし、このような詳細な分類名は正式名称ではなく便宜的な表現です。
そのため、同じモルフ名でも色合いや模様がかなり異なることがあります。
購入や繁殖を考える場合は、実際の見た目をしっかり確認することが何より大切です。
クレステッドゲッコーの主要モルフ一覧
ここでは、クレステッドゲッコーに見られる代表的なモルフを、「模様」「色」「遺伝的特徴」などの視点から体系的にご紹介します。
人気・希少性にかかわらず、どのモルフもそれぞれに魅力があり、好みに応じて選ぶことができます。
※一部のモルフは別ページで詳しく解説していますので、気になる方はリンク先もご覧ください。
ノーマル

遺伝的に特定のモルフとして分類されない、最もシンプルな見た目の個体です。
初期のクレステッドゲッコーはすべてノーマルタイプからスタートしており、現在流通している多様なモルフの元となっています。
模様は控えめか、ほとんど見られない場合も多く、地味に見えるかもしれませんが、丈夫で飼育しやすく、価格も手頃なため、初心者にもおすすめです。
価格相場:8,000〜15,000円前後
パターンレス(旧ソリッド)
8/10日ハッチのLittle*Monster産クレスベビー3号ちゃん🦎💖
— Little*Monster (@sionkanonasuran) December 8, 2022
もうすぐ生後4ヶ月😊
とても綺麗なパターンレスちゃん🧡✨
給水中です🦎🚰😋#クレステッドゲッコー #爬虫類 #クレス#パターンレス#オウカンミカドヤモリ#爬虫類好きと繋がりたい#爬虫類 #crestedgecko#Correlophusciliatus pic.twitter.com/HHGf8uhvJd
体にまったく模様が入らず、ベースカラーのみで構成された個体です。
かつては「ソリッド」とも呼ばれていましたが、現在は「パターンレス」という呼び名が一般的になっています。
濃いブラウンやチョコレートカラーの個体が多く、落ち着いた雰囲気が魅力。中にはビロードのような質感を感じさせる個体も存在します。
価格相場:10,000〜18,000円前後
タイガー

クレステッドゲッコーのタイガーは、体の側面から背中にかけて虎柄のような横縞模様が入るモルフです。
縞の強さには個体差があり、模様がくっきり出ているものは「スーパータイガー」と呼ばれ、コレクターにも人気があります。
視認性の高い模様で初心者にもわかりやすく、価格帯も比較的安定しており、最初の1匹にも選ばれやすい定番モルフです。
価格相場:15,000〜25,000円前後(スーパータイガーは30,000円以上も)

フレイム
お問い合わせのありましたクレステッドゲッコー フレイムです! pic.twitter.com/eE5bc8nxR1
— ネイチャーズ北名古屋店 (@kitanagoyanatu1) July 1, 2018
「炎のような模様」が背中や体側に現れるのがクレステッドゲッコーのフレイムモルフの特徴です。
コントラストがはっきりしている個体はとても美しく、特にベビー〜ヤング期に模様が濃く出る傾向があります。
ただし、成長とともに模様が薄くなる場合もあり、購入時には「成体時の変化」も考慮して選ぶと良いでしょう。
流通数も多く、初心者にも人気の高いモルフです。
価格相場:12,000〜20,000円前後
ハーレクイン

クレステッドゲッコーのハーレクインは、フレイムをさらに強調したような見た目で、手足にまで炎のような模様が入ります。
複雑で装飾的な模様が特徴で、「見た目重視」で選びたい方におすすめのモルフです。
模様の出方によって印象が大きく異なるため、購入時には実物の写真確認が重要です。
価格相場:15,000〜30,000円前後(高品質個体は4万円以上も)

ピンストライプ
ピンストライプ♀■△▽△■#クレステッドゲッコー #クレス
— OKAHAKO爬虫類ショップ@6/1JH大阪6/8近畿レプ (@0KAHAK0) May 14, 2023
30000- pic.twitter.com/8y2t4ooe4l
背中の左右に沿って、縦方向に明るい線が走るのがピンストライプモルフです。
このストライプは「背中のトゲ(クレスト)」の縁に沿って現れ、個体によっては1本ではなく2本、または不規則な線が入る場合もあります。
ピンストライプは他のモルフ(フレイムやハーレクインなど)と複合して現れることが多く、固定率も比較的高いため、繁殖にも人気のある要素です。
価格相場:15,000〜25,000円前後
ダルメシアン

クレステッドゲッコーののダルメシアンは、体全体に黒い斑点(スポット)が入るモルフで、まさに犬のダルメシアンのような外見から名づけられました。
スポットの数には個体差があり、100個を超えると「スーパーダルメシアン」として扱われることもあります。
赤や白のスポットを持つ個体も存在し、独特の個性を演出します。
価格相場:12,000〜20,000円前後(スーパーダルメシアンは25,000〜35,000円)

ドリッピー(表現型)
クレステッドゲッコー
— 爬虫類倶楽部 大宮店 (@89_ohmiya) April 3, 2018
“ドリッピー レッド&クリーム”
NARBC(North American Reptile Breeders Conference & Trade Shows)買い付け!!ストロベリー🍓にクリーム🍨がしたたる美味しそうなクレスです🥤✨ pic.twitter.com/gts8BZpbu2
「背中からお腹にしずくが垂れたような模様」が見られる個体に使われる非公式な呼称です。
特定の遺伝子に基づいたモルフではなく、見た目の印象としての分類であり、主にハーレクインやフレイムと重なって表れることが多いです。
SNS映えしやすく、見た目にインパクトがあることから注目度の高い表現型です。
価格相場:18,000〜30,000円前後(模様の出方による)
リリーホワイト

クレステッドゲッコーのリリーホワイトは、白い体色にやわらかな模様が乗る美しいモルフで、特にSNSでの人気が高いです。
ただし、同士交配による致死遺伝のリスクがあるため、繁殖には注意が必要です。
価格相場:30,000〜100,000円以上(血統・発色で大幅変動)

カプチーノ

クレステッドゲッコーのカプチーノは黒味がかったベースに白やベージュの模様が浮かぶ個体が多く、独特の雰囲気を持つ希少モルフです。
こちらも遺伝的な注意点があるため、交配は慎重に行う必要があります。
価格相場:50,000〜150,000円前後(極端に高額な例もあり)

ホワイトナイト

クレステッドゲッコーのホワイトナイトは、ベースが白〜クリーム色で、全体的に明るいトーンでまとまったモルフ。
リリーホワイトとは異なり、すっきりとした印象を与えるのが特徴です。
国内での流通はまだ少なめです。
価格相場:40,000〜80,000円前後

アザンティック

クレステッドゲッコーのアザンティックは、赤や黄の色素が抑制され、白黒グレーのような無彩色で構成される個体です。
全体的に落ち着いた色味で、他のモルフとは一線を画すクールな印象が人気です。
価格相場:20,000〜60,000円前後

クレステッドゲッコーで人気のモルフ5選
クレステッドゲッコーのモルフは多種多様ですが、中でも特に人気が高いものにはいくつかの共通点があります。
ここでは、SNSでの反響やショップでの取り扱い、初心者の購入傾向などから、現在注目されているモルフをピックアップして紹介します。
「人気=飼いやすさ」ではありませんが、見た目の美しさやわかりやすさ、価格とのバランスから、はじめての1匹として選ばれることも多いです。
タイガー
模様がはっきりしており、「クレスらしい見た目」で選ばれることの多いモルフです。
価格も比較的安定しており、はじめての1匹として人気です。
スーパータイガーと呼ばれる縞模様の濃い個体は上級者からも高く評価されています。
フレイム
背中から体側にかけて炎のような模様が広がるフレイムは、派手すぎず地味すぎない絶妙なバランスが魅力。
カラーバリエーションも豊富で、レッドフレイムなど鮮やかなタイプも多く、SNS映えする見た目が人気の理由です。
ハーレクイン
フレイムをさらに強調したような複雑な模様が魅力のモルフです。
特に、手足までしっかり模様が入っている個体は「美しさ・芸術性の高さ」から人気が高く、コレクターにも評価されています。
ダルメシアン
黒や赤のスポットが体中に入るユニークな見た目が特徴で、「一点もの感」を求める人に人気です。
スポットが100個以上ある「スーパーダルメシアン」は特に注目されやすく、価格も上昇傾向にあります。
リリーホワイト
明るい白い体色にやわらかな模様が重なるリリーホワイトは、SNSでの人気が非常に高いモルフです。
個体ごとの個性も強く、見た目の完成度が高いことから、観賞用として高い人気を誇ります。ただし、繁殖には致死遺伝の知識が必要です。
クレステッドゲッコーのカラー一覧|発色とバリエーション
クレステッドゲッコーの魅力は「モルフ」だけでなく、体のベースカラー(色合い)にもあります。
モルフとカラーは密接に関係していますが、モルフが模様や形質の分類であるのに対し、カラーはその個体が持つ色の傾向を指します。
多くのクレスは単色ではなく、複数の色が組み合わさるため、明確に分類するのが難しいこともありますが、ここではよく使われる代表的なカラー名をご紹介します。
よく見られるカラーバリエーション
- レッド:鮮やかな赤やえんじ色。派手で存在感のある人気色。
- オレンジ:赤に近い色味。発色が良い個体はとても華やか。
- イエロー:明るく、比較的珍しい色。リリーホワイトと重なると淡いクリーム色になることも。
- チョコレート:深いこげ茶系。落ち着いた印象で大人っぽいカラー。
- オリーブ:くすんだグリーンがかった茶系。野性味があり渋めの印象。
- ホワイト/クリーム:リリーホワイトやホワイトナイトなどに見られる色。光沢感が強い。
- ニアブラック:真っ黒ではないが、黒に近い深い色合い。
- ベージュ(バックスキン):柔らかくナチュラルな印象の明るい茶色。土のような色味。
バイカラーとは?
1匹の体に2色がはっきり分かれて現れている個体は「バイカラー」と呼ばれます。
たとえば「上半身がオレンジ、下半身がブラウン」のようなツートーン構成で、モルフ名ではなく表現のひとつとして扱われます。
ファイアアップとファイアダウン
クレステッドゲッコーは、気温や湿度・時間帯・気分によって体色が変化します。
- ファイアアップ:
活発な状態で体色が明るく鮮やかに発色している状態。
夜間や飼育環境に慣れているときに見られることが多い。 - ファイアダウン:
休息中や日中など、体色が落ち着いて暗くなっている状態。
この変化は生理的なもので、個体差があります。
購入時にはファイアアップ状態で撮影された画像が多いため、実際の見た目のギャップに注意しましょう。
ブリーダー向け:クレステッドゲッコーのモルフの作り方と遺伝の基礎知識
クレステッドゲッコーの繁殖を考えるうえで、「どんなモルフが生まれるのか」は非常に重要なテーマです。
ただし、見た目の組み合わせだけでは再現が難しい場合もあり、遺伝の仕組みを理解しておくことがブリーディング成功の鍵になります。
この章では、モルフ作出の基本知識と注意点を解説します。
モルフはどうやって遺伝する?
クレステッドゲッコーのモルフは、以下のような遺伝形式で受け継がれると考えられています。
- 優性遺伝(ドミナント):
片親から受け継げば発現する(例:リリーホワイト) - 劣性遺伝(リセッシブ):
両親が同じ遺伝子を持っていないと発現しない(例:不明確) - 共優性(コドミナント)や多因子遺伝:
複数の要因が絡んで表現されるケース(例:ピンストライプやタイガー系)
多くのクレスモルフはまだ遺伝形式が完全には解明されておらず、経験に基づく累代ブリードで傾向が見られている状態です。
遺伝の再現性はモルフによって違う
たとえば、「リリーホワイト」や「カプチーノ」のような確立されたモルフは比較的再現しやすいですが、「ダルメシアン」「ドリッピー」などは表現型に依存する要素が大きく、完全に同じ模様を再現するのは難しいです。
そのため、ブリーダーは再現性の高いモルフと、表現に個体差が出やすいモルフを見極めたうえで交配計画を立てることが重要です。
致死遺伝に注意すべきモルフもある
いくつかのモルフは、同士交配によって「ホモ接合体」になると致死になることが確認されています。
- リリーホワイト×リリーホワイト → 致死
- カプチーノ×カプチーノ → 致死(アクシオリ)
このようなモルフは、1匹だけなら美しくても繁殖ペアとして組む際に重大なリスクを伴うため、遺伝知識なしでの繁殖は避けるべきです。
モルフ固定の難しさと、計画的な繁殖の重要性
単純に「リリーホワイトとハーレクインを掛けたら、ハーレクイン模様のリリーホワイトが出る」というような計算はできません。
多くのモルフは複数の遺伝要素+個体差+環境要因が絡んでおり、見た目の再現には多世代のブリーディングが必要です。
モルフ作出は、計画性と観察力、記録の積み重ねが成功への鍵です。
まとめ|自分に合ったクレステッドゲッコーのモルフを見つけよう
クレステッドゲッコーには、実に多彩なモルフやカラーバリエーションが存在し、見た目だけでなく、価格や遺伝背景、繁殖の難易度まで含めて一つひとつに個性があります。
「人気があるから」「高いから」といった理由だけで選ぶのではなく、自分の飼育スタイル・好み・知識のレベルに合ったモルフを選ぶことが、長く楽しく付き合う秘訣です。
また、繁殖を視野に入れるなら、遺伝の仕組みやリスク(特に致死遺伝)をきちんと理解しておくことが不可欠です。
初めての方も、経験者の方も、ぜひ多くのモルフに触れ、自分だけのお気に入りの1匹を見つけてみてください。