カーペットパイソンには、「アルビノ」や「ゼブラ」など見た目に特徴のある“モルフ(色彩・模様の変異)”が多数存在し、コレクターや愛好家の間でも人気を集めています。
一方で「コモン」「コースタル」といった地域ごとのバリエーション=“ロカリティ(地域個体群)”もあり、種としての魅力をさらに深く味わえるのも特徴です。
この記事では、代表的なモルフを中心に、ロカリティについてもあわせて簡単に紹介しています。
気になる種類がある方や、見た目で選びたい方はぜひ参考にしてみてください。
カーペットパイソンのモルフとは?

モルフ(Morph)とは、同じ種類の動物の中でも、色や模様などの見た目に明確な違いがある個体群を指す言葉です。
これは突然変異や遺伝的な特徴に由来しており、ペット業界ではヘビやトカゲをはじめとする爬虫類で特によく使われます。
カーペットパイソンは、もともと自然界でも地域ごとにさまざまな見た目をしているのですが、飼育下での意図的な交配によってさらに多彩なモルフが生み出されてきました。
例えば「アルビノ」「アザンティック」「スノー」などは代表的な色彩変異であり、それぞれに独特の美しさがあります。
モルフは単なる色違いというだけでなく、価格や流通量、繁殖の難易度などにも影響を与える要素です。
また、遺伝の組み合わせによっては「het(ヘテロ)」や「ダブルヘテロ」などの表現も使われ、専門的なブリーディングにも関わってきます。
見た目が好みで選ばれることも多いですが、モルフによっては性格傾向やサイズにわずかな差が出ることもあるため、購入時にはしっかりと特徴を確認しておくと安心です。
代表的なカーペットパイソンのモルフ一覧

カーペットパイソンには、色や模様に大きな違いのあるモルフ(変異種)が複数存在します。
以下では、代表的なモルフを簡単に紹介し、それぞれの詳しい特徴を解説したリンクも掲載しています。
カーペットパイソン・アルビノ

白や黄色を基調とした美しい発色が特徴で、赤い目を持つ個体も多く見られます。
カーペットパイソン アルビノは遺伝的に「メラニン(黒色素)を欠く」モルフで、明るい見た目と希少性から非常に人気があります。

カーペットパイソン(ノーマル)
特別な遺伝変異を持たない、いわゆる「野生型」の見た目です。個体によって模様や色の濃淡には違いがありますが、ベースとなるモルフとして扱われ、価格も比較的リーズナブルです。
▶詳しくはこちら:カーペットパイソン(ノーマル)の特徴
カーペットパイソン・グラナイト

カーペットパイソン・グラナイトは細かい粒状の模様が全身に広がる、独特の見た目が特徴のモルフです。
体色のコントラストが強く、個体差も大きいためコレクター人気も高めです。

カーペットパイソン・キャラメル

カーペットパイソン・キャラメルは名前の通り、キャラメルのような茶系〜金色系の柔らかい色合いを持つモルフです。
落ち着いた雰囲気の色調から、派手すぎない見た目を好む方におすすめです。

カーペットパイソン・アザンティック

カーペットパイソン・アザンティックは黄色などの暖色系色素を欠き、白黒~グレー調のシックな見た目になります。
モノトーン系のヘビが好きな方に人気があり、繁殖モルフのベースにもよく使われます。

カーペットパイソン・ゼブラ

カーペットパイソン・ゼブラは名前の通り、体に縞模様がくっきりと浮き出る派手なモルフです。
ジャガーと並んで見た目のインパクトが強く、観賞性重視の方に選ばれることが多いです。

カーペットパイソン・スノー

カーペットパイソン・スノーはアルビノとアザンティックの両方を掛け合わせたコンボモルフです。
白を基調とした幻想的な色合いが特徴で、人気・希少性ともに高めです。

カーペットパイソン・ジャングル

カーペットパイソン・ジャングルは鮮やかな黄色と黒のコントラストが魅力的なモルフです。
人工的に選抜交配されたラインも多く、色の乗りや発色には個体差が大きいのが特徴です。

カーペットパイソンのロカリティとは?
ロカリティとは、地域個体群を意味する言葉で、「同じ種の中でも、生息している地域ごとに特徴が分かれるグループ」のことを指します。
カーペットパイソンは広範囲に分布しており、地域によって色や模様、サイズ、性格に違いが見られます。
これらの違いは「自然選択」の結果であり、主に人工的な交配で生まれるモルフとは明確に区別されます。
たとえば、ダイヤモンドカーペットパイソンのように黒白のコントラストが強い個体や、コースタルカーペットパイソンのように大型化しやすい個体など、地域特性が色濃く現れるのがロカリティの魅力です。
なお、ペットショップなどで流通している個体の中には、複数のロカリティが混ざった「ミックス血統」も存在します。
血統にこだわる場合は、信頼できるブリーダーや出自の明確な個体を選ぶと良いでしょう。
代表的なカーペットパイソンのロカリティ一覧
カーペットパイソンには、オーストラリアを中心に複数の地域個体群(ロカリティ)が存在します。
それぞれのロカリティには独自の色彩や体格の傾向があり、見た目や性格にも違いが見られます。
ここでは代表的なロカリティを紹介し、詳細記事へのリンクも掲載しています。
コモンカーペットパイソン

コモンカーペットパイソンはさまざまなロカリティの血統が混ざって生まれた、いわば“ミックス系”の個体群です。
見た目やサイズには個体差がありますが、価格が手頃で流通量も多く、初心者にも人気があります。

コースタルカーペットパイソン

コースタルカーペットパイソンはオーストラリア東海岸に生息する大型のロカリティで、全長は2mを超えることも。
色合いはやや暗めで、黒やグレーがベースになる個体が多く、重厚な雰囲気を持っています。

ダイヤモンドカーペットパイソン

ダイヤモンドカーペットパイソンは、網目模様のような白黒の強いコントラストが特徴的で、まるで別種のような見た目をしています。
寒冷地に生息するため、やや温度管理に注意が必要なロカリティです。

インランドカーペットパイソン

インランドカーペットパイソンは、オーストラリア内陸部に生息し、やや地味な色合いと控えめな模様が特徴です。
情報が少なく希少性が高いため、ロカリティにこだわるマニアから密かに人気があります。

ハリソンカーペットパイソン

ハリソンカーペットパイソンは限られた地域に由来する血統で、体色はやや明るめ。
見た目の特徴はコースタルとイリアンジャヤの中間のような印象を受けることもあり情報が少なくレアな存在です。

イリアンジャヤカーペットパイソン

イリアンジャヤカーペットパイソンは、インドネシア・パプアニューギニア側の島に生息するカーペットパイソンで、オーストラリア本土産ではない珍しいロカリティです。
明るい体色と中型サイズが特徴です。

用語解説:モルフ関連ワードまとめ
カーペットパイソンのモルフや血統に関する言葉は少し専門的です。
ここでは、記事内で登場した用語を簡単に解説します。
モルフ(Morph)
同じ種の中で、色や模様の違いが遺伝的に固定されたタイプのこと。
自然発生した突然変異をもとに繁殖で定着させたものも含まれる。
ローカリティ(地域個体群)
「ローカリティ」とは、野生の個体が生息していた地理的な地域(産地)によって分類される系統のことです。
直訳すると「地域性」という意味で、ヘビやトカゲなどの爬虫類ではとてもよく使われる用語です。
CB / WC(Captive Bred / Wild Caught)
CB(キャプティブ・ブレッド)は「飼育下繁殖個体」の略で、人の手で繁殖された個体を指します。
健康状態が安定しており、寄生虫のリスクが少なく、人に慣れやすい傾向があります。
一方、WC(ワイルド・コート)は「野生採集個体」の略で、自然界で捕獲された個体です。
ワイルド個体ならではの色彩や性格の魅力がありますが、ストレスに弱く、寄生虫や拒食などのリスクが高いこともあります。
ショップで個体を選ぶときは、このCB/WCの違いを把握しておくと安心です。
アルビノ(Albino)
色素(メラニン)を作れない遺伝的特徴により、白や黄色の体色と赤い目を持つモルフ。カーペットパイソンではダーウィン系から生まれたものが多い。
het(ヘテロ)
「heterozygous(ヘテロ接合体)」の略。見た目には現れていないが、遺伝子としては特定のモルフを持っている個体。
たとえば「hetアルビノ」はアルビノの遺伝子を隠し持っている。
ライン(Line)
特定のブリーダーや繁殖計画によって作られた、見た目や特徴が安定した血統系統のこと。たとえば「Red Line」なら、赤みの強い個体を選別交配したライン。
Don Patterson(ドン・パターソン)
オーストラリアの伝説的ブリーダー。
ジャガーモルフの開発者として知られ、「Don Patterson line」として血統名として語り継がれている。
ダーウィンカーペットパイソン
オーストラリア北部ダーウィン周辺に生息するローカリティ。
体色が明るめで黄色っぽい傾向があり、アルビノモルフの起源となった地域個体群。
レッドライン(Red Line)
「レッドライン」は、特定のブリード(血統)を表す言葉で、カーペットパイソンの中でも体色に赤みが強く出るラインを指します。
特にアルビノ系モルフに多く見られ、「アルビノ・レッドライン」といった表現で販売されることもあります。
見た目の鮮やかさを強調したい場合に使われやすい表記です。
コンボモルフ(Combo Morph)
複数のモルフ(遺伝的変異)を組み合わせて生まれた個体を「コンボモルフ」と呼びます。
たとえば、アルビノとアザンティックを掛け合わせた「スノー」や、ゼブラとジャガーを掛け合わせた「ゼブラジャガー」などが代表例です。
見た目の派手さが増し、希少性も高くなる傾向にあります。
ポッシブルhet(possible het)
「ポッシブルhet(ポシヘテ)」とは、ある遺伝子(モルフ)を潜在的に持っている“可能性がある”個体を指します。
見た目には通常のノーマルと変わらないことが多いですが、繁殖させた際に隠れた遺伝子が現れることがあります。
ブリーディングを考える場合は重要な判断材料となります。
ブリード(Breed)/ラインブリード(Linebreed)
「ブリード」は繁殖を意味する言葉で、爬虫類の世界では「特定の見た目や特徴を強調するために交配を重ねる」ことを指します。
中でも「ラインブリード」は、同じ系統の中で優れた特徴を選抜して交配する手法です。
ジャングルカーペットパイソンなどに多く見られ、発色や模様の美しさを安定して引き出す目的で使われます。
アウトクロス(Outcross)
アウトクロスとは、近縁個体同士の交配(インブリード)を避けるために、血縁関係のない個体を交配させることを指します。
これにより遺伝的多様性を保ち、健康的な個体を維持することができます。
ブリーディングを重ねる上で、血統の健全性を保つための重要な手法です。
カーペットパイソンのモルフ計算とは?
カーペットパイソンの「モルフ計算」とは、繁殖させたときにどんなモルフの子どもが何%の確率で生まれるかを予測するためのものです。
これは遺伝の法則(メンデル遺伝)に基づいており、モルフの遺伝形式によって結果が大きく変わります。
モルフの遺伝はどうやって決まる?
カーペットパイソンのモルフには、主に以下のような遺伝形式があります。
- 劣性遺伝:アルビノやアザンティックなど
→ 両親から同じモルフ遺伝子を受け継がないと発現しない - 優性遺伝:ジャガーなど(1つ持っていれば見た目に現れる)
- 共同優性・不完全優性:モルフによっては中間型になるケースもあり
このため、「両親がどんなモルフ(またはhet)なのか」が非常に重要になります。
het(ヘテロ)とは何か?
het(ヘテロ)とは、あるモルフの遺伝子を片方だけ持っているが見た目には現れていない個体のことです。
たとえば、「アルビノ het」は、見た目はノーマルでも、アルビノの遺伝子を1つだけ持っている状態。
このhet同士を掛け合わせると、1/4の確率でアルビノが生まれるという計算になります。
モルフ計算の代表例(簡易版)
親の組み合わせ | 生まれる子のモルフ | 確率の目安 |
---|---|---|
アルビノ × アルビノ | 100% アルビノ | 100% |
アルビノ × アルビノ het | 50% アルビノ、50% アルビノ het | 50:50 |
アルビノ het × アルビノ het | 25% アルビノ、50% アルビノ het、25% ノーマル | 1:2:1 |
アルビノ × ノーマル | 100% アルビノ het | 0%発現(すべてキャリア) |
※「het」はキャリア個体。繁殖で子にモルフが現れる可能性あり。
モルフ計算ツール(外部リソース)
より複雑な組み合わせや多遺伝子の交配計算には、モルフ計算ツールが便利です。
以下のようなオンラインツールが広く使われています。

※ボールパイソンのモルフ計算で有名なツールですが、基本的な遺伝形式は同じなので参考になります。
繁殖を目的にする場合、遺伝の仕組みをある程度理解しておくことは非常に重要です。
見た目だけで親を選ぶのではなく、「何が出るか」をあらかじめ想定しておくことが繁殖成功のカギとなります。