ブルーイグアナとグリーンイグアナ――一見すると名前の違いだけのように思えるかもしれませんが、実はこの2つには見た目だけでなく、生物学的な違いや流通の実態においても大きな違いがあります。
さらにややこしいのが、「ブルーイグアナ」と呼ばれて販売されている個体の多くが、実はグリーンイグアナのブルー系モルフ(変異個体)であるという点です。
この記事では、正式なブルーイグアナとグリーンイグアナ、そしてその中間にあたる“ブルー系グリーンイグアナ”の3タイプについて、特徴や違いをわかりやすく比較していきます。
グリーンイグアナとは

生態・特性
グリーンイグアナ(学名:Iguana iguana)は、中南米を中心に広く分布する大型の樹上性トカゲで、ペットとしても非常に人気があります。
「グリーン」という名前がついていますが、実際には緑だけでなく、オレンジや茶色っぽい個体も存在するなど、体色にはある程度の幅があります。
体長は最大で全長2mほどにもなり、成長に伴って体つきもかなり迫力が出てきます。
性格は個体差が大きいものの、慣れてくれば人に懐く個体も多く、しっかりと世話をすれば10年以上の長期飼育も可能です。
飼育について
ただし、幼体の頃は繊細で、適切な温度・湿度管理や栄養バランスの取れた給餌が求められます。
また、大型になることから、最終的にはケージではなく部屋そのものを使った飼育(いわゆる“イグアナ部屋”)が必要になるケースも少なくありません。
グリーンイグアナは長年にわたり流通量も多く、飼育ノウハウが蓄積されている点も大きなメリットです。
初心者には少しハードルが高いかもしれませんが、爬虫類飼育の中では比較的ポピュラーで、情報収集しやすい種類だと言えるでしょう。
ブルー系グリーンイグアナ(モルフ)とは

厳密に言えば「ブルーイグアナ」ではない
「ブルーイグアナ」として販売されている個体の多くは、実はグリーンイグアナ(学名:Iguana iguana)の中でも、青みの強い体色を持つ“ブルー系モルフ”と呼ばれる変異個体です。
モルフ(morph)とは、特定の遺伝的変異によって色や模様に違いが現れる個体を指し、爬虫類では特に人気のある品種改良の一つです。
見た目の特徴
ブルー系モルフのグリーンイグアナは、特に幼体のうちは鮮やかな青色をしており、その美しさから高値で取引されることもあります。
ただし成長とともに青さが薄れ、緑がかってくることも多いため、成体でも青を保てるかは個体差があります。
飼育について
外見や飼育方法は通常のグリーンイグアナとほぼ同様であり、分類上も“別種”ではなく、あくまでグリーンイグアナ (Iguana iguana) に属します。
つまり、「ブルーイグアナ」という名前で流通していても、学術的にはグリーンイグアナのバリエーションの一つである、というのが正しい理解です。
そのため、「希少なブルーイグアナを飼っている!」と思っていたら、実は普通のグリーンイグアナだった…ということも珍しくありません。
とはいえ、ブルー系モルフは見た目の美しさから人気も高く、飼育する楽しみも十分にあります。
ブルーイグアナとは(正式種)

生態
ブルーイグアナとは、カリブ海のケイマン諸島に生息するCyclura lewisiという固有種を指します。
学術的にはグリーンイグアナ (Iguana iguana) とは全く別の種類であり、遺伝的にも分類的にも異なる存在です。
野生個体はケイマン島にのみ生息しており、絶滅危惧種(IUCNレッドリスト:Critically Endangered)に指定されています。
見た目と性格の特徴
このブルーイグアナは、成体になるにつれて体全体が美しい青色に染まり、体長は約1.5m前後。
筋肉質でずんぐりとした体型や短めの尾、そして強い四肢を持つ点で、グリーンイグアナとは見た目にも大きな違いがあります。
また、性格的には警戒心が強く、野生では人に対して攻撃的な面も見せることがあるとされています。
ペットとしての流通は極めて稀
ただし、ペットとして流通しているブルーイグアナは極めて稀です。
正規のルートで流通することはほとんどなく、目にする機会も非常に限られています。
現在は保護活動の一環として繁殖・再導入が行われている状況であり、個人が簡単に飼育できるような種類ではありません。
3タイプのイグアナの違いを比較

見た目の違い
- グリーンイグアナ:
名前通り緑色を基調とした体色をしていますが、個体差によってオレンジや茶色、黒みがかった色を持つものもいます。
成体になると首のヒダや尾の縞模様が目立つようになります。 - ブルー系グリーンイグアナ:
幼体のうちは非常に鮮やかな青色をしています。
ただし、成長とともに色が緑に近づいてくることも多く、成体ではやや青みがかった緑色になることが一般的です。 - ブルーイグアナ(正式種):
成体になっても全体が澄んだ青色を保ちます。
グリーンイグアナよりもがっしりとした体型で、より“爬虫類らしい”ワイルドな風貌です。
性格の違い
- グリーンイグアナ:
個体差があるものの、比較的人慣れしやすく、長期飼育で穏やかになるケースも多くあります。
ただし、思春期以降は気性が荒くなることもあるため注意が必要です。 - ブルー系グリーンイグアナ:
性格は通常のグリーンイグアナとほぼ同じです。
見た目以外に明確な違いはないと考えてよいでしょう。 - ブルーイグアナ:
野生個体がベースとなっており、警戒心が強く神経質とされます。
人に慣れるには時間がかかり、個人飼育には向かないとも言われています。
入手しやすさの違い
- グリーンイグアナ;
爬虫類ショップでも比較的よく見かけ、価格も安価です。初心者にも手が届きやすい種類です。 - ブルー系グリーンイグアナ:
グリーンイグアナよりやや高価ですが、専門店やイベントでは入手可能です。
ネット通販でも見かけることがあります。 - ブルーイグアナ:
ペットとしての流通はほぼなく、国内で目にする機会は皆無に近いです。
展示施設などで見るのが一般的です。
飼育の難しさの違い
- グリーンイグアナ:
情報が多く、飼育経験者も多いため、ある程度は安心して飼育を始められます。
ただし大型化するため、飼育スペースの確保は必須です。 - ブルー系グリーンイグアナ:
同様の環境で飼育できますが、見た目の美しさを維持したい場合は照明・紫外線や食事管理に一層の配慮が求められます。 - ブルーイグアナ:
個人飼育の情報が乏しく、生態の詳細も分からない部分が多いため、現実的には飼育が難しい種類といえます。
ブルーイグアナの情報はまだ少ない?流通の実態と注意点

「ブルーイグアナ」という言葉をインターネットやショップで見かけたとき、多くの場合は“青みがかったイグアナ”全般を指して使われています。
正式なブルーイグアナはほとんど流通していない
「ブルーイグアナ」と言われていても正式なブルーイグアナ(Cyclura lewisi)はほとんどなく、ブルー系のグリーンイグアナ(Iguana iguana)であるケースが非常に多いのが現状です。
実際、正式なブルーイグアナは保護対象の希少種であり、一般の爬虫類ショップやブリーダーから入手できることはほとんどありません。
写真や動画で見ることはあっても、販売されていること自体が極めて稀で、国内では飼育事例の情報もほぼ皆無です。
購入前の確認が必要
一方、ブルー系のグリーンイグアナは「ブルーイグアナ」という商品名で販売されることが多く、知らずに購入してしまうケースも少なくありません。
ショップ側も悪意があるわけではなく、あくまで見た目の印象をもとに名前を付けていることが多いため、購入者側が“何を指してブルーイグアナと呼んでいるのか”をしっかり確認することが重要です。
本物は飼育難易度も極めて高い!
また、正式なブルーイグアナは飼育下での情報が非常に限られているため非常に難易度が高く、もし本物を手に入れる機会があったとしても、専門的な知識や設備、十分なスペースと飼育技術が求められることになります。
気軽にペットとしてお迎えできる種類ではないということを、事前にしっかり理解しておく必要があります。
まとめ|どのタイプが飼育に向いている?
ブルーイグアナとグリーンイグアナという言葉は、一見すると単純な色違いのように見えるかもしれませんが、実際には分類や流通の実態に大きな違いがあります。
それぞれの特徴を改めて整理すると、以下のようになります。
- グリーンイグアナは最もポピュラーで、飼育情報も豊富。初心者にはやや難しい面もあるものの、環境を整えれば長期飼育も可能な定番種です。
- ブルー系グリーンイグアナは、見た目の美しさから人気が高く、「見た目にもこだわりたい」という方におすすめ。ただし、青さを保つには照明や環境管理が重要です。
- ブルーイグアナ(Cyclura lewisi)は、希少かつ流通もほとんどないため、一般的なペットとしては現実的ではありません。見た目に惹かれても、まずはグリーンイグアナの飼育経験を積むことが現実的な第一歩でしょう。
「ブルーイグアナ」という言葉に惑わされず、その個体が何者なのかをしっかり見極める目を持つことが、後悔しない爬虫類飼育への第一歩です。
特に初心者の方は、見た目だけで判断せず、販売店の説明や種名表記、学名などにも注目して選ぶようにしましょう。