フトアゴヒゲトカゲはおとなしくて飼いやすい人気のトカゲですが、ある日突然ぐったりと動かなくなることがあります。
目を閉じたまま横たわり、呼びかけにも反応がないと、飼い主としてはとても不安になりますよね。
こうした状態には温度管理のミスや脱水、病気などさまざまな原因が考えられます。
この記事では、フトアゴヒゲトカゲがぐったりする主な原因とその対処法、そして適切な病院の選び方まで詳しく解説します。
フトアゴヒゲトカゲがぐったり?それとも昼寝中?見極めるポイント

フトアゴヒゲトカゲが「ぐったりしている」と感じても、実は単に寝ているだけという場合もあります。
特に日中に暖かいバスキングスポットでのんびり目を閉じている姿は、一見すると具合が悪いように見えることも。
判断を誤って慌ててしまう前に、以下の点をチェックしてみましょう。
- 軽く触れてみて反応があるか?
ぐったりしていても、触れると目を開けたり、体を動かすようであれば単なる休憩中の可能性が高いです。
逆に、まったく反応しない場合は注意が必要です。 - 呼吸(胸の動き)はあるか?
静かに観察して、胸やお腹がゆっくり上下しているか確認しましょう。
呼吸が浅くなっている、もしくはまったく見られない場合はすぐに対処が必要です。 - 最近の食欲・排泄は正常か?
直近でしっかり食べていたか、フンが出ていたかも判断の材料になります。
元気だった記憶が昨日まであるなら、突然の異常は何かトラブルが起きたサインかもしれません。 - 体温は適正か?
冷たくなっていないか触って確かめましょう。
手で触れてヒヤッとする場合、保温環境に問題がある可能性が高いです。
見た目だけでは判断が難しいケースも多いため、少しでも様子がおかしいと感じたら、早めに専門の動物病院に相談しましょう。
フトアゴヒゲトカゲがぐったりする原因

保温器具の故障
フトアゴヒゲトカゲがぐったりしている原因の多くは、ヒーターなど器具の故障が原因です。
光の出ないハロゲンヒーターやパネルヒーター、遠赤外線ヒーターの場合、故障していてもわかりにくいものです。
保温器具が壊れてしまうと、ケージ内の温度が上がらず、変温動物のフトアゴヒゲトカゲは動けなくなってしまいます。
温度計をチェックして、寒くなっていないか確認しましょう。
もし保温器具の故障で温度が下がっていた場合、器具を新しいものに取り替えて、ゆっくり普段通りの温度に上げましょう。
急に温度を上げるとショックで弱ってしまいます。
脱水症状
実は、フトアゴヒゲトカゲは脱水症状になりやすいトカゲです。
その理由は、動かない水が見えないから。
キラキラと反射する水滴のような水しか、彼らには見えないのです。
トレーニングすれば水入れを覚えてくれますが、最初から水入れの水が飲めるわけではありません。
飼育してしばらく経っていても脱水症状になることがあるので、注意が必要です。
ためしに、スポイトで口元に水を垂らしてみましょう。
ごくごく飲み出したら要注意です。
ただし、あまりに脱水症状が進んでいると、口元に水を垂らしても反応しないことがあります。
脱皮前兆の場合もある?
フトアゴヒゲトカゲがぐったりしているように見えても、実は「脱皮前のサイン」という場合があります。
脱皮の前後には一時的に動きが鈍くなったり、じっとしている時間が長くなったりすることがあるのです。
とくに以下のような様子が見られる場合は、脱皮の準備に入っている可能性があります。
- 体全体が白っぽく見える(古い皮膚が浮いてきている)
- 皮膚に粉っぽさやザラつきを感じる
- 食欲が落ちている
- 動かずにじっとしている時間が長い
だいぶ大きくなってきたカリス
— あいでぃる (@Aidil_herptiles) September 15, 2019
体つきとか顔も大人っぽくなった
今は脱皮前で白っぽい
(全長約32cm)#フトアゴヒゲトカゲ pic.twitter.com/G4nBPNqGxr
こうした状態であれば、すぐに病気や脱水と決めつけず、脱皮サイクルの一環かどうかを見極めることも大切です。
脱皮をサポートするには?
脱皮前には軽い霧吹きやウェットシェルターを用意して、フトアゴヒゲトカゲの飼育ケージ内の湿度をあげることで皮膚の乾燥を防ぐことが有効です。
ただし、過度な湿度はかえってカビや細菌の原因になるので、局所的な加湿に留めておくとよいでしょう。
ぐったりしている原因が脱皮であれば、脱皮が終われば元気を取り戻すことが多いです。
ただし、脱皮不全を起こしている場合や、脱皮中にも関わらずまったく動かず反応がない場合は、別の原因が重なっている可能性もあるため注意が必要です。

病気や寿命の可能性
実は、フトアゴヒゲトカゲが明確な病気にかかることはあまりありません。
フトアゴヒゲトカゲに限らず、爬虫類の生態は分からないことが多く、きちんと病名がつくことが少ないのです。
そのため、症状からなんの病気か調べるのはかなり難しいといえます。
ちなみに、フトアゴヒゲトカゲの寿命は8~10年くらいです。
私が飼っていた個体も9年生きましたが、晩年は寝ている時間が多くなったものの、ぐったりしている様子はありませんでした。
以下の記事ではフトアゴヒゲトカゲの死ぬ前の兆候について詳しく解説していますので是非参考にしてください。

ぐったり=拒食のサイン?食欲低下との関係性
フトアゴヒゲトカゲがぐったりしているとき、同時に「餌を食べない」という状況もよく見られます。
この場合、「拒食が原因で弱っている」のか、あるいは「体調が悪くて拒食になっている」のかを見極めることが重要です。
たとえば以下のようなパターンがあります。
- 温度が低すぎる → 活動量が落ちて食べなくなる → 衰弱してぐったり
- 脱水状態 → 内臓機能が低下 → 拒食とぐったりが併発
- ストレス環境(照明が明るすぎる・物音が多いなど) → 拒食 → 動かなくなる
このように、拒食とぐったりはセットになって現れることが多く、原因を1つに絞るのが難しいのが特徴です。
拒食のチェックポイント
- 最後にしっかり餌を食べたのはいつか?
- 便は出ているか?(未消化物が残っていないか)
- 餌を目の前に出しても無反応か?
こうした点を観察し、原因が「一時的な拒食」なのか、「深刻な体調不良に伴う拒食」なのかを見極めましょう。
なお、拒食が続いた場合でも無理に餌を押し込むのはNGです。
誤嚥やストレスを引き起こし、状態を悪化させるリスクがあります。
拒食とぐったりの両方が見られた場合は、早急に温度や湿度を見直し、それでも改善しないときはすぐに病院を受診しましょう。
飼育者ができるフトアゴヒゲトカゲの応急処置と注意点

フトアゴヒゲトカゲがぐったりしているのを発見したとき、すぐに病院に行くのが理想ですが、診察までに時間がかかることもあります。
そこで、自宅でできる応急処置を知っておくと安心です。
ただし、やみくもな対応はかえって悪化させる原因になるため、以下のポイントを慎重に確認しましょう。
温度をチェックし、ゆっくり元に戻す
まずはケージ内の温度が適正かどうか確認します。
昼間であればホットスポットは35℃前後、全体では28〜30℃程度が理想です。
ヒーターが故障していた場合は、すぐに新しい保温器具を用意し、ゆっくりと温度を上げていくことが大切です。
一気に温めるとショックを起こしてしまう可能性があります。
フトアゴヒゲトカゲの温度管理については以下の記事で詳しく解説していますので是非参考にしてください。

脱水を疑う場合は、スポイトで給水を
体がややしぼんで見える、目が落ちくぼんでいるといった脱水のサインがあれば、スポイトや滴下器で口元に水を垂らしてみましょう。
反応して飲み始めれば、かなり水分が不足していたと考えられます。
ただし、無理に口を開かせて水を入れようとするのはNGです。
誤飲やストレスで状態が悪化することがあります。
絶対にやってはいけないこと
- 口を無理やり開いて餌や水を入れる
- ヒーターで急加熱する
- 揺すったり、無理に動かそうとする
上記のような対応は、フトアゴヒゲトカゲに大きなダメージを与える可能性があるため避けましょう。
少しでも異変を感じたら、まずは落ち着いて飼育環境を見直すこと。
そして、その状況をしっかりメモしておき、病院で伝えられるようにしておくと、スムーズな診察につながります。
トカゲを診てくれる病院はある?動物病院の選び方

ここでご紹介した対策は、あくまでもその場しのぎです。
出来るだけ早く、専門の病院に連れて行くことが肝心です。
最近はイヌやネコ以外でも診てくれる動物病院が増えてきましたが、爬虫類を診てくれるところはまだまだ少ないのが現状です。
いきなりトカゲを連れて行っても、診察を断られてしまうことがあります。
ネットで動物病院を探す場合がほとんどだと思いますので、「爬虫類を診察できます」とハッキリ書かれたところを探しましょう。
「エキゾチックアニマル」と書かれている場合、フェレットやハリネズミは診察できても爬虫類は対象外、ということが多くあります。
電話して聞いてみるのも一手です。
いずれにせよ、急に探して見つかるものではないので、日頃から探しておくといいでしょう。
また、診察の際に飼育環境を聞かれることがあります。
ケージの大きさや温度はメモを取っておき、写真も撮っておくといいでしょう。
フトアゴヒゲトカゲがぐったり【まとめ】
フトアゴヒゲトカゲがぐったりする原因として最も多いのは、ケージ内の温度が下がっていたり、水分不足による脱水です。
また、寿命や病気の可能性もゼロではありません。
応急処置も重要ですが、少しでも異常を感じたらすぐに爬虫類対応の動物病院に相談しましょう。
日頃から診てもらえる病院をリストアップしておくと、いざという時に安心です。