フトアゴヒゲトカゲを健康に育てるうえで、温度管理は最も重要なポイントのひとつです。
特に、バスキングスポットやホットスポットの温度設定、夜間や冬場の温度調整、さらにはベビー期・卵・温浴時など、状況によって求められる適正温度は変わってきます。
本記事では、フトアゴヒゲトカゲの温度管理に関する情報を網羅的に解説し、どのような環境を整えれば安心して飼育できるのかを具体的に紹介します。
また、湿度についても気になる方は、別記事『フトアゴヒゲトカゲの湿度管理は必要?』をご覧ください。
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フトアゴヒゲトカゲにとって温度管理が重要な理由

フトアゴヒゲトカゲは変温動物に分類されており、自分で体温を調節することができません。
そのため、周囲の温度環境が直接的に体の状態に影響します。
温度が低すぎると代謝が落ち、食欲不振や消化不良を引き起こします。
また免疫力も低下し、病気にかかりやすくなるリスクもあります。
反対に温度が高すぎると、熱中症や脱水症状を引き起こしフトアゴヒゲトカゲがぐったりする可能性があり、命に関わることもあるため注意が必要です。

フトアゴはもともとオーストラリアの乾燥した地域に生息しており、日中の高温と夜間の冷え込みという温度差がある環境に適応しています。
そのため、飼育環境でもこの自然に近い「温度勾配」を意識した設計が重要になります。
健康で活発に育てるためには、単に暖かくするだけではなく、「暑すぎず・寒すぎず」「温度差のある環境」をきちんと整えることが大切です。
フトアゴヒゲトカゲに適した温度とは?

フトアゴヒゲトカゲを健康に飼育するうえで、最適な温度を把握しておくことは非常に重要です。
ケージ内には温度差(温度勾配)を作ることが理想で、トカゲ自身が暑い場所と涼しい場所を行き来できるようにします。
以下では、各ゾーンに必要な温度について詳しく解説します。
ホットスポット・バスキングスポットの理想温度
フトアゴが日光浴のように体温を上げるために必要なのが、バスキングスポットです。
ここにはバスキングライトやホットスポットライトを設置し、35~40℃になるように調整します。
フトアゴのバスキングスポットを大きいものに更新
— がらむ (@garamgaram16) April 11, 2025
フンや尿酸も取りやすく爪が滑ることも無さそうでなかなか良いかも pic.twitter.com/MnpSuCBKDM
ライトの光だけで温度が不足する場合には、パネルヒーターやセラミックヒーターなどを併用して床面から温めるのも有効です。
特に冬場など室温が低い時期は、ライトのみでは目標温度に届かないケースもあるため、複数の保温機器をうまく組み合わせましょう。
この温度によって代謝や消化が促進され、食欲の維持や病気の予防にもつながります。
ライトの真下だけが極端に熱くなりすぎないように、照射範囲の広さや高さの調整も意識してください。
クールスポットの理想温度
ケージの反対側には、バスキングとは逆に体温を下げられる場所(クールスポット)を設けておきます。
ここは25~30℃を目安とし、直射のライトが当たらないようにしておきます。
クールスポットがないと、常に高温にさらされてしまい、フトアゴが逃げ場を失ってストレスや体調不良を起こす原因になります。
温度勾配の作り方と重要性
ケージ全体を均一な温度にするのではなく、片側は暑く、もう片側は涼しくするのが理想的です。
これを「温度勾配(グラデーション)」と呼び、フトアゴ自身が好きなタイミングで移動して体温を調節できるようにすることで、ストレスを大きく軽減できます。
たとえば左側にバスキングライトを配置してホットスポットを作り、右側にシェルターや水皿を置いてクールスポットにする、といった形が一般的です。
フトアゴヒゲトカゲの温度管理|時間帯・季節・成長段階ごと

フトアゴヒゲトカゲの理想温度は1日中・一年中ずっと同じではありません。
昼と夜・夏と冬・ベビーと成体など、それぞれの状況に応じて温度を調整する必要があります。
ここでは、時間帯や季節、ライフステージに合わせた温度管理のポイントを紹介します。
夏の温度管理(暑さ対策)
夏は室温自体が高くなるため、バスキングスポットが40℃を超えないよう注意が必要です。
過剰な高温は脱水や熱中症の原因になります。
・ケージを直射日光の当たる場所に置かない
・ケージ全体の通気を良くする
・室温が高すぎるときはエアコンや冷却ファンで調整
・クールスポットには涼しいシェルターや冷却素材を用意
日本の夏は暑いので期間中は、エアコンを活用して部屋ごと管理するのが理想です。
冬の温度管理(冷え対策と擬似冬眠のリスク)
冬は室温が大きく下がるため、バスキングスポットを中心に保温器具をフル活用しましょう。
日中はバスキングスポットを35~40℃、クールゾーンは25℃程度を目安に。
夜間は活動が減るためやや低めでも構いませんが、最低でも20℃以上を維持してください。
これより冷えると、擬似冬眠状態に入り、食欲不振や免疫低下などのトラブルが起きやすくなります。
・夜間はセラミックヒーターやナイトグローランプで保温
・断熱マットなどでケージ周辺の冷え対策を行う
・タイマー+サーモスタットで自動制御もおすすめ
夜間に寝るときの温度設定
フトアゴは昼行性なので、夜になると活動が止まり、就寝モードに入ります。
このときの温度は20〜25℃を目安に保ちましょう。
真っ暗にする必要はありませんが、夜間用の赤外線やブルー系のナイトグローランプを使うと自然な日没環境を再現できます。
また、ヒーター類の音や光がストレスにならないよう、静音設計のものを選ぶのが理想です。
ベビー時の温度管理のポイント
フトアゴヒゲトカゲのベビーはまだ体力が弱いため、より高めで安定した温度が必要です。
・バスキングスポットは38~40℃をキープ
・クールスポットも28℃以上が安心
・夜間も20~25℃を下回らないように
急激な温度変化に弱いので、日中も夜間も一定の暖かさを保つことが重要です。
卵の孵化に必要な温度と注意点
フトアゴヒゲトカゲの卵を孵化させるには、インキュベーター(孵卵器)などで28~31℃の安定した温度を維持する必要があります。
自然孵化は困難であり、室温に任せるだけでは成功率が大幅に下がります。
フトアゴさん卵 16日目。
— めだか時々レプ (@TakaMEDAKAandT) March 29, 2025
少し凹んでいた卵も、膨らんでいました。ライトで確認、みんな元気に成長中と思われます。
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また、卵の成長には湿度管理も密接に関わってくるため、ここでは詳細に触れませんが、合わせて調整が必要です。
フトアゴヒゲトカゲを温浴や水に触れるときの温度調整

フトアゴヒゲトカゲは基本的に乾燥環境を好みますが、脱皮の補助や便秘対策として「温浴」をすることがあります。
また、ケージ内の水の温度も、意外と見落としがちなポイントです。
温浴時の適温と注意点
フトアゴを温浴させる際は、お湯の温度を32~36℃程度に保つのが基本です。
人肌よりもややぬるめが目安で、熱すぎると火傷のリスクがあるため、必ず温度計で計測してから入浴させましょう。
温浴は1回あたり5〜10分程度で十分です。
温浴の後は日光浴ね!
— AZU (*˘︶˘*).。.:*♡(爬虫類垢)主名あい♡ (@AZU2021azu) August 24, 2023
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長時間の温浴は体力を奪い、かえって体調を崩す原因になります。
ベビーや弱っている個体には無理に行わない方が安全です。
また、フトアゴが水を飲んだりすることもあるため、きれいな水道水を使用し、使用後は毎回交換してください。
一般的にはカルキ抜きは不要で水道水をそのまま使えます。
ケージ内の水の温度と配置
ケージ内に設置する水入れにも注意が必要です。
バスキングライトの近くに置いてしまうと、水温が上昇しすぎて雑菌が繁殖しやすくなったり、蒸発による湿度上昇を招くことがあります。
水皿は基本的にクールスポット側か中央付近に設置し、水の温度が室温(20〜25℃)程度に保たれるように配置するのが理想です。
なお、フトアゴは水浴びをする習性が強くないため、水が冷たすぎても熱すぎても避けてしまうことがあります。
飲水としての役割もあるため、常に清潔な水を適温で用意することが大切です。
フトアゴヒゲトカゲの飼育下での温度計の使い方

フトアゴヒゲトカゲの健康を守るには、「適温を保つ」だけでなく、「適温を正確に測定する」ことも同じくらい大切です。
温度を把握するためには、温度計の設置場所や使い方に工夫が必要です。
温度計の理想的な位置とは?
ケージ内の温度は場所によってかなり差が出ます。
特にホットスポットとクールスポットでは10℃以上の差がつくこともあるため、温度計は1つでは不十分です。
最低でも以下の3ヶ所に設置しましょう。
- ホットスポットの地面(バスキングライトの直下)
- クールスポットの床付近(ライトの当たらない場所)
- ケージ中央の中間地点(全体の空気温度の確認用)
これにより、温度勾配がうまく機能しているかを確認できるようになります。
タイトル 今日は敷布団、以前は掛け布団
— No59 (@no59No59) June 10, 2022
温度計はおもちゃです(ニッコリ
#フトアゴヒゲトカゲ #フトアゴ #爬虫類 #トカゲ #掛け布団 #敷布団 #温湿計 pic.twitter.com/iduAJfKPFt
特にホットスポットはライトの照射角度によって温度が変わるため、赤外線温度計や接触式温度センサーで測ると、より正確です。
サーモスタットとの併用で安定化
温度調整を手動で行うのは手間も多く、管理ミスにもつながります。
そこでおすすめなのが、サーモスタット付きの温度管理システムの導入です。
サーモスタットを使えば、あらかじめ設定した温度をキープするためにヒーターのON/OFFを自動で制御してくれます。
特に夜間や不在時など、細かな温度調整が難しい場面でも安心です。
また、サーモスタットには温度表示機能がついているものもあり、温度計の代用としても役立ちます。
精度が高く、長期的な飼育においては非常に心強いアイテムです。
温度管理に役立つおすすめアイテム

フトアゴヒゲトカゲの温度管理は、「何℃にすればいいか」を知るだけでは不十分です。
適切な温度を維持するためのアイテム選びも重要であり、便利な器具を上手く活用することで、安定した飼育環境を作ることができます。
ここでは、温度調整に欠かせない代表的なアイテムを紹介します。
セラミックヒーター(昼夜両用)
光を出さずに熱だけを発するヒーターで、夜間の保温にも使えるのが最大の特徴です。
フトアゴは夜に暗さが必要な生き物なので、明かりが出ないセラミックヒーターはとても重宝されます。
スポットライトと併用して、日中は光と熱を、夜間は熱だけを補う、といった使い方が一般的です。
パネルヒーター(底面用)
ケージの床下に敷いて床面からじんわり暖めるタイプのヒーターです。
局所的な加温に適しており、シェルターの下などに使うと、フトアゴが自ら暖かさを選んで移動できます。
ただし、これだけでは十分な温度が得られないため、必ずバスキングライトなどと併用する必要があります。
冷却ファン・保冷材(夏の暑さ対策)
夏場の高温対策として、爬虫類用の小型冷却ファンや、保冷材をシェルターの周辺に設置するといった方法も有効です。
ただし、冷えすぎには注意が必要なので、風が直接あたらない位置や短時間の使用にとどめましょう。
冷却グッズを使う際は、温度計で常に状況をモニタリングしてください。
サーモスタット付き温度管理機器
ヒーターや冷却装置と連動させて温度を一定に保つための自動制御装置です。
設定温度に応じてオンオフを切り替えてくれるため、過加熱や冷えすぎを防止できます。
また、複数の出力を持つモデルであれば、「日中はライトを稼働、夜間はセラミックヒーターに切り替え」などの自動運転も可能です。
忙しい人や初心者こそ導入すべき必須アイテムと言えます。
湿度管理についても気になる方へ
この記事では温度管理に焦点を当てて解説してきましたが、「湿度も大事なんじゃないの?」と感じた方もいるかもしれません。
実際、フトアゴヒゲトカゲは乾燥地帯に生息するため湿度はそれほど高くない方が適していますし、温度程シビアではなく自然にまかせておいても問題ないのですが、脱皮や病気予防の観点では一定の注意も必要です。
湿度については別記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
👉 フトアゴヒゲトカゲの湿度管理は必要?適正な乾燥環境と例外ケースも解説!

この記事では、
- 適正湿度の数値
- 湿度が高すぎるとどうなる?
- 湿度を上げた方がよい例外ケース(脱皮・体調不良時)
などについて詳しくご紹介しています。
まとめ|理想の温度環境でフトアゴを健康に育てよう
フトアゴヒゲトカゲを健康に飼育するためには、環境温度のコントロールが最も重要なポイントです。
もう一度、押さえておきたい温度の目安を整理しておきましょう。
- バスキングスポット(ホットスポット):35〜40℃
- クールスポット:25〜30℃
- 夜間のケージ全体:20〜25℃
- ベビー期はやや高めで安定を意識
- 卵の孵化温度:28〜31℃をインキュベーターで維持
- 温浴時の湯温:32〜36℃でぬるめをキープ
また、ケージ内には温度勾配を意識したゾーニングを行い、フトアゴ自身が体温を調整できる環境を作ってあげましょう。
さらに、温度計を複数設置し、ホット/クール/中央部の3点を常にチェックできるようにするのがおすすめです。
適切な温度管理ができていれば、フトアゴは日々活発に動き、よく食べ、しっかり育ってくれます。
これからフトアゴを迎える方も、すでに飼育中の方も、ぜひこの記事を参考にして、快適な温度環境づくりに取り組んでみてくださいね!
\ ついでにこれも読んでいけ。 /
いや、読んでくださいお願いします(土下座)